イクイノックスに縁のある苦労人が「8年ぶり」のG1勝利!リバティアイランド凌ぐ勝ちタイムでレコード更新

 10日、阪神競馬場で行われた阪神ジュベナイルF(G1)は、アスコリピチェーノ(牝2、美浦・黒岩陽一厩舎)が、クビ差で迫った2着ステレンボッシュとの叩き合いを制して優勝。前走の新潟2歳S(G3)に続いて重賞を連勝し、デビューから3戦全勝で2歳女王の座に就いた。

 後に牝馬三冠を達成したリバティアイランドが圧勝した昨年に対し、今年はどの馬が勝っても不思議ではない混戦ムード。1番人気サフィラの単勝が4.6倍、2番人気コラソンビートが4.8倍で続き、3番人気アスコリピチェーノは5.9倍での戴冠だった。

 下馬評こそ抜けた馬がいない雰囲気だったものの、無敗の快進撃が続いたのは、混戦を制した勝ち馬のみだ。時計の掛かるレースも散見し始めた現在の阪神で、勝ちタイムの1分32秒6(良)は、リバティアイランドの1分33秒1(良)を上回っただけでなく、2019年にレシステンシアがマークした1分32秒7(良)をも更新するレコード。2着馬とクビ差だったものの、世代トップクラスの1頭として十分な内容である。

 チェルヴィニアやボンドガールといった大物候補が、脚元のアクシデントで阪神JFへの参戦が叶わなかったとはいえ、このパフォーマンスなら彼女らが相手でも引けは取らなかったのではないか。

「スタッフの皆さんにも牧場の皆さんにも手をかけてもらっていて、すごく良いコンディションでしたので、自信を持って臨みました。結果を出せてホッとしました」

イクイノックスに縁のある苦労人が「8年ぶり」のG1勝利!

北村宏司騎手 撮影:Ruriko.I

 会心の勝利をそう振り返った鞍上の北村宏司騎手にとっても、キタサンブラックを初G1勝ちに導いた2015年菊花賞以来となる嬉しい勝利だ。

「良い景色だと思いました。馬のおかげだと思いますので、これからも、馬も僕も応援してもらえたらと思います」

 G1・4勝目を飾った関東の苦労人は、「馬のおかげ」と謙遜していたが、元々は名伯楽・藤沢和雄調教師の愛弟子。C.ルメール騎手の台頭で重賞に騎乗するチャンスが減少していたものの、その腕は確かだ。

「06年のヴィクトリアマイルをダンスインザムードで制したのが、北村宏騎手のG1初勝利でした。失礼を承知で評すると、華のあるタイプではありませんが、穴馬で渋い好騎乗を見せる騎手ですね。

ダンスインザムードこそ2番人気でしたが、G1・2勝目となった天皇賞・秋のスピルバーグも菊花賞のキタサンブラックも5番人気。そして今回のアスコリピチェーノは3番人気での勝利。チャンスのある馬に騎乗するときは、怖い騎手ですよ。

ただアスコリピチェーノは、距離延長に不安が残るダイワメジャー産駒。桜花賞(G1)は有力ですが、オークス(G1)となると分かりません。まだまだ牝馬クラシックは混戦が続きそうです」(競馬記者)

 スター街道を歩んだ武豊騎手とのコンビが有名なキタサンブラックにしても、キャリア唯一の二桁着順に沈んだ15年の日本ダービー(G1)以外では、4戦全勝と好騎乗で結果を残していた北村宏騎手。皮肉なことにG1馬に導いた鞍上は、負傷によって次走の有馬記念(G1)で横山典弘騎手へと乗り替わり、さらには翌年の大阪杯(G2・当時)でも復帰が微妙ということで陣営は武豊騎手を抜擢。引退レースまで名コンビとして名を馳せた一方、北村宏騎手に手綱が戻ることはなかった。

 そしてそのキタサンブラックが種牡馬となってイクイノックスを世に送り出した。もし、菊花賞でG1馬の仲間入りをしていなければ、キタサンブラックがブレイクするタイミングも異なったかもしれない。

 そういう意味では、イクイノックスと北村宏騎手も間接的に関わりが存在しているともいえる。そのイクイノックスをダービーで負かしたのが、父の主戦を任された武豊騎手。このときのパートナー・ドウデュースの父は、ディープインパクトに国内で唯一黒星をつけたハーツクライで、その背中にはルメール騎手がいた。

 ブラッドスポーツともいわれる競馬だが、こうした人と馬の間にも今になって思い返せば様々なドラマが絡んでいる。だからこそ長く見続けていると、より面白みが増すということだろう。

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