「史上唯一」フェブラリーではなかった開催? 追撃及ばず武豊は2着に敗戦…「地方の怪物」が歴史に名を刻んだ25年前の快挙
その年の最初に開催されるG1として有名なフェブラリーS(G1)。「フェブラリー」のつく名が示す通り、2月に行われるレースである。
昨年の優勝馬レモンポップは、12月のチャンピオンズC(G1)も制し、最優秀ダート馬の栄誉を手にした一方、今年の始動戦は連覇のかかるフェブラリーSではなく、サウジC(G1)への参戦を表明している。
同時期に世界最高峰の賞金を誇るサウジCが創設されたことにより、近年のダートトップクラスが積極的に海外遠征を決断するケースも増えてきた。本来は上半期のダート王を決めるG1のフェブラリーSではあるが、実力上位馬の回避続出も顕著。メンバーレベルの低下を危惧されている。
長い歴史で唯一の1月開催だったフェブラリーSの勝ち馬は?
そんな厳しい状況下に置かれているフェブラリーSだが、過去に一度だけ2月に行われなかった年があることをご存じだろうか。
それは、「地方の怪物」メイセイオペラが史上唯一、中央のG1制覇の快挙を成し遂げた1999年だ。97年にG1昇格したフェブラリーSだが、84年にレースが創設された以降で1月開催は今年を含めた41年の歴史で99年の1回のみ。この年に限っては、“ジャニュアリーS(G1)”だった訳だ。
既に前年の南部杯(G1)で船橋の怪物アブクマポーロを倒し、岩手の怪物として全国に名を轟かせたメイセイオペラは、99年の始動戦に中央勢が相手のフェブラリーSに挑戦する。
前走のガーネットS(G3)を圧勝したワシントンカラーに1番人気を譲ったものの、最後の直線を外目の好位5番手から力強く抜け出して優勝。同時に地方所属馬による史上初の中央G1制覇という快挙を達成した瞬間でもあった。歴史的快挙を目撃した観衆も、好騎乗で勝利へと導いた鞍上の菅原勲騎手を「イサオコール」で迎えた。
また、奇しくも2馬身差の2着に入ったエムアイブランに騎乗していたのは、JRAが誇る天才・武豊騎手。7番人気の穴馬で存在感を見せたレジェンドだが、この日のヒーローは間違いなくメイセイオペラと菅原勲騎手のコンビだった。
あれから25年が過ぎ、上半期のダート王決定戦の輝きが失われつつある現状は、なんとも寂しい限りである。