「期待していました」引退間近のベテランから武豊に託されたバトン! 思い出されるウオッカ、ダイワスカーレットと「3強」を形成した牝馬の記憶
「期待していました。競馬に結びついてよかったです」
先月21日の小倉5Rに行われた芝1200mの新馬戦。レース後にそうコメントしたのが勝ち馬メイショウヤマモモ(牝3歳、栗東・高橋亮厩舎)に騎乗していた秋山真一郎騎手だ。
秋山真騎手はメイショウヤマモモのレース2週間前にも跨っており、その動きの良さにかなりの手応えを感じて取っていた様子。レースでは中団を追走すると最後の直線、外から1頭だけ矢のような伸びを見せてデビュー勝ちを決めた。
「デビュー前から素質を感じていた馬で初陣Vを飾ったのですから、秋山真騎手にとっても嬉しい1勝だったのではないでしょうか。
また鞍上の期待に応えたメイショウヤマモモも、直線は目を見張るような末脚でした。レース後には2着馬に騎乗していた鮫島克駿騎手が『直線はセーフティーリードかと思ったが、勝った馬は強かった。1頭脚が違いました』と脱帽のコメント。この先も要注目の1頭と見て間違いないです」(競馬誌ライター)
そんなメイショウヤマモモが17日、京都6Rで2戦目を迎える。鞍上は秋山真騎手に替わり、武豊騎手が務めることとなった。
「45歳のベテラン・秋山真騎手は来月1日付で調教師に転身。今月一杯でステッキを置くことも乗り替わりと関係がありそうです。ただ現時点ではまだジョッキーの身ですから、引き続き手綱を取りたかったという思いも少しはあったかもしれませんね。
ちなみに期待の3歳牝馬で秋山真騎手から武豊騎手へのスイッチといえば、個人的にはベッラレイアが思い出されます」(同)
ウオッカ、ダイワスカーレットと「3強」を形成した牝馬の記憶
ウオッカ、ダイワスカーレットと同世代であるベッラレイアは、2007年1月にデビュー。初戦から秋山真騎手が手綱を取り続け、同年のオークス(G1)に駒を進める。最大のライバルだったダイワスカーレットが直前に回避、ウオッカは日本ダービー(G1)に挑戦したため当日は1番人気に推されたが、ローブデコルテとの叩き合いに敗れ、わずかハナ差で栄冠を逃してしまった。
そして、この敗戦を機にベッラレイアは武豊騎手との新コンビで牝馬三冠ラストの秋華賞(G1)を目指すこととなる。秋山真騎手は無念の降板となったものの、乗り替わりのきっかけとなったオークスの騎乗については「何度乗っても同じ競馬をしている」と後に語っている。
秋華賞当日のベッラレイアは単勝3.8倍でウオッカ、ダイワスカーレットに続く3番人気の支持。4番人気のローブデコルテの単勝が20.0倍だったことからも、いかに3強ムードが強かったかが分かるだろう。
レースで武豊騎手は後方待機策からの末脚勝負を選択。最後の直線では上がり32秒9という極限に近い切れ味を見せたものの、勝ち馬ダイワスカーレットから0秒5差をつけられた4着に終わり、3歳牝馬のG1タイトルを掴むことは叶わなかった。
「世代屈指の末脚を誇ったベッラレイアに武豊騎手の手綱ということで1着を期待したファンも多かったと思いますが、その後のダイワスカーレットの強さは周知の通り。1着を狙うために思い切った作戦を採ったとは思いますが、結果的に相手が悪かったですね。
武豊騎手も後日、自身の公式サイトに『あそこからでは届きません。もう少しうまく乗れなかったかという反省は残りました』と、敗者の弁をつづっていました」(同)
武豊騎手がウオッカに騎乗することもあり、ベッラレイアは次戦のヴィクトリアマイル(G1)から再び秋山真騎手に手綱が戻った。フローラS(G2)を最後にコンビで白星を挙げることはできなかったが、秋山真騎手の代表的なお手馬としてベッラレイアの名前を挙げるファンは今でも多い。
そんな乗り替わり劇から約17年の月日が流れた2024年。騎手人生も残りわずかとなった秋山真騎手から武豊騎手にバトンが託されることとなったメイショウヤマモモは、果たしてどのようなレースを見せてくれるだろうか。