三浦皇成「これはモノが違う」悲願のG1初制覇が目前で霧散…「今後、ダート界を引っ張る馬になってほしい」宿敵レモンポップへ1年越しの挑戦状
「跨った時に『これはモノが違う』と感じていました――」
2年前の秋、三浦皇成騎手はJRAのG1制覇という自身の悲願を達成する大きなチャンスを迎えていた。
JRA通算1042勝を始め、重賞22勝(2024年4月28日現在)を誇るジョッキーでありながら、今なおG1タイトルに手が届いていない三浦騎手。そんな悩める名手に巡ってきたチャンスが、2022年11月の武蔵野S(G3)を制したギルデッドミラーだった。
武蔵野Sといえば、約3か月後に行われるフェブラリーS(G1)と同じ東京・ダート1600mが舞台。2着とはハナ差の激戦だったが、負かした相手は後にそのフェブラリーSを勝ち、同年のチャンピオンズC(G1)制覇と合わせて統一ダート王に君臨するレモンポップである。
NHKマイルC(G1)3着など、若い頃は芝で活躍していたギルデッドミラー。だが、徐々に成績が頭打ちとなり、3走前のダート初挑戦の際に新コンビを結成したのが三浦騎手だった。
初ダートという新境地に挑戦したギルデッドミラーと三浦騎手は、まるで水を得た魚のように初戦のNST賞(OP)を快勝。勢いに乗ってグリーンチャンネルC(OP)で2着すると、前述した武蔵野Sではレモンポップを下して重賞初制覇を飾った。
その翌年の根岸S(G3)で、再びレモンポップと接戦を演じたギルデッドミラーは半馬身差で後れを取ったが、距離は1400mだった。フェブラリーSに向けて「1600mはギリギリ」と話すレモンポップの戸崎圭太騎手に対して、「マイルならもっと良くなる」と巻き返しを誓う三浦騎手。3週間後の本番へ、旗色の優劣は明らかだった。
待望の初G1制覇へ。いよいよ機運も高まってきた刹那、悲報は突然やってきた。
レースを11日後に控えた2月8日、ギルデッドミラー陣営は繋靭帯炎、さらに第一指骨の剥離骨折が判明したことを発表。幸い全治3カ月程度の軽傷だったが、6歳の牝馬は大事を取って現役を引退することが決まった。
「このまま無事に行ってくれれば」とは、武蔵野Sを勝利した際の三浦騎手の言葉だ。だが、そんな願いも空しく、おそらくはこれまでの騎手人生で最大のチャンスを迎えるはずだったG1挑戦は、本当にあと一歩のところで霧散してしまった。
宿敵レモンポップへ1年越しの挑戦状
あの悲劇から約1年と2か月、レモンポップが前年の最優秀ダートホースとして君臨するダート界に「今後、ダート界を引っ張る馬になってほしいです」と再び挑戦状を叩きつけた三浦騎手。新たな相棒は27日のユニコーンS(G3)を2馬身半差で圧勝したラムジェットだ。
今後は、まず6月5日に大井競馬場で行われる東京ダービー(G1)で世代の頂点を目指すことになるラムジェットだが、主戦騎手を始め、陣営が見据えるゴールはもっと高い場所にある。
「毎回、毎回、しっかりと結果を残すのが僕にとってできることです」
ギルデッドミラーとのコンビでは叶わなかった、宿敵レモンポップとのダート界の覇権を懸けた戦いへ――。幾多の無念を乗り越えた三浦騎手が一歩、また一歩と悲願達成に歩みを進めていく。