「秘密兵器」投入でノーザンファームに肉薄の近未来?社台ファームが描く「逆襲のシナリオ」

撮影:Ruriko.I

 春競馬は今がまさに最盛期。今週末にオークス(G1)、来週末には日本ダービー(G1)が行われる。

 現時点のJRA各部門のリーディングを確認すると、騎手は川田将雅騎手が2位の戸崎圭太騎手に11勝差をつけて首位を快走中。一方で調教師は3勝差に7人が入り乱れる混戦模様となっている。

 そんな中、今年の生産者リーディングは例年とやや異なる様相を呈している。

 上位は例年通り、1位のノーザンファームを2位の社台ファームが追いかける展開だ。昨年までの直近7年間はノーザンファームがダブルスコア(2倍以上)の大差をつけていた。

 ところが、今年は5月半ばの時点ではあるが、両者の獲得賞金額はノーザンファームの約56.7億円に対して、社台ファームは34.7億円。その差が2倍超から約1.6倍に縮まっている。ここ2週は、NHKマイルC(G1、ジャンタルマンタル)とヴィクトリアマイル(G1、テンハッピーローズ)で社台ファームの生産馬が勝利を収めるなど、勢いがあるのは後者の方だろう。

 さらに近い将来、両者の差がさらに縮小する可能性もあるという。

社台ファームが描く「逆襲のシナリオ」

「社台ファームが三重県鈴鹿市内に建設中だったいわゆる“外厩”と呼ばれる競走馬育成施設が来月1日に開業します。栗東トレセンまでは1時間以内の距離と交通の便も良く、1000mを超える直線坂路が最大の魅力。

資材の調達に時間を要したため、当初の予定より1年ほど開業が遅れましたが、特に関西馬にとっては頼もしい存在になるでしょうね」(競馬誌ライター)

 また、ノーザンファームとはやや異なる育成方針を打ち出していることも社台ファームの更なる反撃を支えるかもしれない。

「ノーザンファームは牡馬ならダービー、牝馬なら桜花賞(G1)やオークスを見据える傾向にあります。3歳春が大目標となれば、必然的にデビューの時期も早まります。一方で、社台ファームは中長期的な視点を重んじた育成方針を取り始めているようです」(同)

 JRA-VANのホームページ上に掲載されている『POGの王道2024-2025年版 2歳馬牧場リポート2024春』には、社台ファームの東礼治郎場長が育成方針について語っているインタビュー記事があるので紹介したい。

 同場長によると、「当然、2歳も走らせたいんですが、賞金は古馬のレースの方が高いのもあって、長く活躍できる馬を作りたいですね」とのこと。「2歳戦を焦って使うと、最初は良くてもその後につながっていかない。早く行ける馬はどんどん行けばいいのですが、“本当の目標は先なんだよ”という意識が若いスタッフに浸透してきた」のだという。

 実際、今年に入ってから社台ファームの生産馬は古馬の活躍が目立っている。ノーザンファーム生産馬との年齢別獲得賞金額を比べると一目瞭然だ。

【3歳馬】

ノーザンファーム 22.9億円
社台ファーム 10.7億円
【古馬(4歳以上)】
ノーザンファーム 32.8億円
社台ファーム 23.6億円

 3歳馬では、両者の間に2倍以上の開きがあるが、古馬に関しては約1.4倍。しかも1走当たりの獲得賞金額は社台ファームが上回っている。

 長い目で見れば、古馬になってからの方が競走馬として現役で過ごす期間は長いため、3歳クラシックにこだわり過ぎない社台ファームの育成方針の転換は理にかなっているといえそうだ。

 秘密兵器とも呼べる“鈴鹿トレセン”の開業が起爆剤となれば、数年後には再び2大巨頭が拮抗する時代となるかもしれない。

GJ 編集部

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