【日本ダービー】女傑レガレイラが超えるべき壁。「64年ぶり」に歴史を変えた名牝ウオッカとの比較で見えた“ジャスティンミラノ超えの奇跡”

ジャスティンミラノ 撮影:Ruriko.I

 いよいよ待ちに待った大一番だ。今週末は日本中が注目する日本ダービー(G1)が行われる。

 皐月賞(G1)を無敗で制しクラシック三冠を狙うジャスティンミラノ、キタサンブラックの弟で青葉賞(G2)の勝ち馬シュガークン、3戦無敗のシックスペンス。そして紅一点の牝馬ながら、このメンバーを相手に頂点を目指すレガレイラなど、多種多様な、そしてハイレベルなメンバーが揃った。

 例年と比較してもレベルの高さは一目瞭然。皐月賞はレコードタイムで決着し、3着ジャンタルマンタルがNHKマイルC(G1)を快勝したことを考えれば、この日本ダービーもハイレベルなレースになることは間違いない。

レガレイラ 撮影:Ruriko.I

 中でも注目は、名牝ウオッカに続く牝馬の日本ダービー制覇を目指すレガレイラだろう。

 一般的に見て牝馬が日本ダービーを勝つのは容易なことではない。ウオッカが勝利した後も、レッドリヴェール、サトノレイナスが挑戦したが、いずれも牡馬の壁を超えることができなかった。それほどウオッカの勝利は歴史的な偉業だったのだ。

 果たしてレガレイラはウオッカに並ぶことができるのか。これまでの戦績や対戦相手などからレースの展望をしてみたい。

名牝ウオッカとの比較で見えた“ジャスティンミラノ超えの奇跡”

 ウオッカが64年ぶりに牝馬として日本ダービーを勝利した2007年は、皐月賞を7番人気で勝利したヴィクトリー、2着は15番人気サンツェッペリン、3着がフサイチホウオー。青葉賞の勝ち馬はヒラボクロイヤルで、他にもアドマイヤオーラ、ドリームジャーニーといった面々が揃っていた。

 特筆すべきは、皐月賞、青葉賞、京都新聞杯(G2)、NHKマイルCといった日本ダービーに直結する前哨戦の重賞レースはすべて、1番人気以外が勝利していたこと。この状況はこの世代が混戦だったことを意味している。

 そのウオッカも桜花賞は1番人気で2着に敗退していた。当時は「桜花賞を勝てなかった馬が日本ダービーに出るなんておかしい」といった批判的な声もあったが、蓋を開けてみれば上がり最速の33秒0、そして2着アサクサキングスに0.5秒差の圧勝だったのだ。そしてその勝利がフロックでないことは、その後のジャパンC(G1)、天皇賞・秋(G1)、安田記念(G1)などG1を5勝の実績からも証明されている。

 この混戦傾向は今年も当てはまるといえよう。ウオッカが勝利した2007年と同様に皐月賞、青葉賞、京都新聞杯、NHKマイルCはすべて1番人気以外が勝利しているのだ。皐月賞は2番人気ジャスティンミラノ、青葉賞は2番人気シュガークン、京都新聞杯は8番人気ジューンテイク、NHKマイルCは2番人気ジャンタルマンタル。つまりこれまでの流れから、今年の日本ダービーは混戦模様といえるのだ。

 ウオッカは2歳時に阪神ジュベナイルF(G1)を制したように、早くから完成していた。日本ダービーを勝つには運も必要だが、それ以上に3歳春時点での完成度が求められる。

 同様にレガレイラも、2歳時にホープフルS(G1)を勝利している。つまりウオッカ同様に、早くからG1レースを勝利するほど完成している。しかもウオッカよりも早い段階で牡馬相手にG1レースを勝利して見せたのだから、現時点での完成度はウオッカを大きく上回るといっても過言ではあるまい。

 その後、前哨戦の皐月賞は休み明けや乗り替わりもあって敗退したが、それでも最後は上がり最速タイの豪脚で追い込んできた。最後は脚を余した印象もあったが、逆に日本ダービーを前に力を温存できたと考えれば上々の内容だったといえる。

 さらにレガレイラの期待を高めるのが、同馬を支えるチーム体制である。生産者は天下のノーザンファーム。日本ダービーは過去10年で7勝と圧倒的な成績を残しており、今年も桜花賞、皐月賞、オークス(G1)を制するなど生産馬は好調。管理する木村哲也調教師はオークスをチェルヴィニアで勝利したほか、イクイノックスを管理した名調教師でもある。そして鞍上は、オークスを巧みな騎乗で勝利したトップジョッキーのC.ルメール騎手。ホープフルSまでレガレイラの手綱をすべて取っていた主戦騎手だ。ノーザンファーム・木村厩舎・ルメールは、今の日本競馬で最も信頼できるチームであり、万全の状態で出走させるに違いない。

 混戦模様のメンバー構成、出走馬中随一の完成度、すでに牡馬相手にG1レースを勝利している実績、そして国内最高のチーム。あらゆる要素がレガレイラの勝利を後押ししているよう。令和初の牝馬による日本ダービー制覇は目前だ!

仙谷コウタ

初競馬は父親に連れていかれた大井競馬。学生時代から東京競馬場に通い、最初に的中させた重賞はセンゴクシルバーが勝ったダイヤモンドS(G3)。卒業後は出版社のアルバイトを経て競馬雑誌の編集、編集長も歴任。その後テレビやラジオの競馬番組制作にも携わり、多くの人脈を構築する。今はフリーで活動する傍ら、雑誌時代の分析力と人脈を活かし独自の視点でレースの分析を行っている。座右の銘は「万馬券以外は元返し」。

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