セレクトセール「億超え0頭」の冷遇から1年で大逆転!? イクイノックスに、ソールオリエンス登場…昨年のキタサンブラック「バブル」は幻想か、本物か
キタサンバブルに沸いた昨年のセレクトセール
初日のインクルードベティの2022が3億1000万円、アイムオールレディセクシーの2022が2億9000万円、ダイヤモンドディーバの2022が1億7000万円、2日目もファディラーの2023が3億8000万円、キラーグレイシスの2023が3億2000万円、ウォークロニクルの2023が2億9000万円――。
種牡馬として一時代を築いたディープインパクトの産駒ではない。昨年のセレクトセールにおける「キタサンブラック産駒」の落札価格である。
他にもアメージングムーンの2023が1億9000万円、エントロピアの2023が1億4500万円、ダンダラの2023が1億1000万円などなど、1億超えがリーズナブルに見える錯覚を起こすほど、昨年のセレクトセール2023におけるキタサンブラックの存在感、そしてその人気ぶりは他を圧倒するものだった。
ちなみに昨年のセレクトセールでキタサンブラックは合計21頭が上場され、その約半数にあたる9頭が億超え。平均落札価格は軽く1億円を超えている。
無論、その背景には明確な理由がある。
2023年7月といえば、キタサンブラック産駒のイクイノックスがドバイシーマクラシック(G1)のパフォーマンスが世界1位に認定され、前月の宝塚記念(G1)で凱旋勝利を飾ったばかり。さらに春のクラシックではソールオリエンスが皐月賞(G1)を勝利して日本ダービー(G1)でも2着と世代を牽引する活躍を見せるなど、キタサンブラックは新たな大物種牡馬として競馬界を席巻していた。
だって、億超えすらいなかったんですよ?(笑)
一方で、前年のイクイノックスの活躍もあって、その種付料は前年500万円から1000万円に倍増。種付料は当然、セールのリザーブ価格にも大きく影響するが、この春さらに倍増の2000万円に到達した通り、セレクトセールに参加したバイヤーたちにとっては、まさに「キタサンブラック産駒を買うなら、今」というタイミングだったのだ。当時を知る記者が語る。
「正直、キタサンブラックの高騰ぶりには驚きました。もちろんイクイノックスやソールオリエンスの活躍もあって人気になることはわかっていましたが、まさかここまで『買い』が集中するとは。だって、前年のキタサンブラックは億超えすらいなかったんですよ?(笑)」(競馬記者)
記者が話す通り、前年のセレクトセール2022におけるキタサンブラック産駒は合計10頭が上場されたものの、億超えはゼロ。最高落札額はランドオーバーシーの2021の8200万円であり、5000万円以下に終わる産駒も目立つなど厳しいものだった。
「まるで『キタサンバブル』とでも言えばよいのでしょうか。当時の種付料No.1として期待されていたエピファネイア産駒の不振なども重なったと思いますが、昨年のセレクトセールのキタサンブラックは、ちょっと異常な人気でぶりしたね。これが冷静な評価であればいいんですが……」(同)
ちなみに先述したランドオーバーシーの2021は里見治オーナーが落札し、今ではサトノエピックとして今春のユニコーンS(G3)、東京ダービー(G1)で2着するなど、その期待に違わぬ活躍を見せている。
果たして、綺羅星のごとく億超えを連発したキタサンブラック産駒たちは当たりか、ハズレか。今週末には昨年のセレクトセール1歳において、その日の最高額タイとなる3億100万円で落札されたインクルードベティの2022ことダノンシーマ(牡2歳、栗東・中内田充正厩舎)がデビュー戦を迎える。