「兄に近づいている」ペリファーニアの不安…エフフォーリアにも立ちはだかった高い壁

 9日、阪神競馬場では牝馬三冠の第1戦となる桜花賞(G1)が行われる。

 今年も迎えたクラシック戦線の幕開け。2歳女王・リバティアイランドが大きな注目を集め、戦前から予想オッズは単勝1倍台が見込まれる“1強”ムードの様相となっている。

 しかし、この桜花賞では直近10年で1番人気馬が【1-3-1-5/10】と苦戦傾向にあることは忘れてはならない。単勝1倍台の支持を受けた有望株であっても、ラッキーライラックやソウルスターリング、メジャーエンブレムにルージュバックといった強豪が期待を裏切る形で敗れていることもあって、どうにかつけ入る隙を伺おうという穴党の方も少なくないのではないか。

 そこで過去を振り返ってみると、やはり印象深いのが4戦無敗の2歳女王として堂々と桜花賞に臨んだラッキーライラックを撃破したアーモンドアイの例だろう。後に日本屈指の名牝となる同馬は前年10月に未勝利を勝ち上がった後、年明けのシンザン記念(G3)をステップに桜花賞に殴り込みをかけ、一気に世代の頂点の座を奪ってみせた。

 そこで得られた教訓である、一発を狙うなら“未対決の馬”に魅力を感じる。その観点から、今年のメンバーの中で未知の魅力に期待したくなる1頭がペリファーニア(牝3歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)だ。

 デビューが昨年12月25日と遅かったため、ここまで2戦1勝でリバティアイランドとの対戦歴はない。それでも、初戦は単勝1.4倍の期待に応える完勝で突破すると、2戦目で挑んだチューリップ賞(G2)でも3着に入り、桜花賞への挑戦権を掴み取った。

 王者を倒す新星という意味では、トライアルで敗れている馬には少々手を出しづらいという気持ちも理解できるが、ペリファーニアの前走に関してはキャリア2戦目にして初の関西遠征だった点に加え、17頭中の17番枠という厳しい条件の下で行われたレースだったことは大きい。

 しかも、レース後の横山武史騎手からは「ノドが鳴るところは大きな欠点で、きょうも4コーナーから苦しそうに走っていました」というまるで大敗した馬かのようなコメントも飛び出している。そんな状況でもラストは3ハロン33秒9の脚を使って追い上げ、スローペースを逃げて押し切ったモズメイメイとはタイム差なしの3着。負けて強しの内容だったと言えるだろう。

 さらにこのペリファーニアの母はケイティーズハートということで、本馬は2021年のJRA年度代表馬にも輝いたエフフォーリアの半妹にあたる。所属も兄と同じ鹿戸厩舎で、主戦まで兄と同じ横山武騎手とあって、血統面や人馬の縁という点でも魅力的に映る部分は多い。

 気になる「ノド」の不安についても、騎手から「今回は舌をしばるということで、本番で良い方向に向いてくれたら」と対策をして臨むことが明かされており、調教師からは「正式にはノド鳴りではなく、若い時から息づかいが悪い」と疾患ではないことを強調するコメントも出ている。

 その上で「いろいろとケアはしています」とやはり打てる手は打ったうえで挑むことを明言し、最後には「フットワークを見ると、だいぶ兄のエフフォーリアに近づいていると思います」という楽しみなコメントも飛び出した。「間違いなく上積みがあるので、すごく楽しみにしています」と本番に向けたトーンは高く、打倒・リバティアイランドの一角として戦前の予想オッズ以上に注目を集めることがあっても驚けない。

兄・エフフォーリアにも立ちはだかった高い壁

 ただし、鹿戸厩舎を語る上では気になるデータもある。今年で16年目、JRAでは通算402勝を挙げている東の名門だが、なんとそのうち94%にあたる377勝は北海道も含めた中山より北東側に集中している。すなわち、中京以西では通算25勝と、東西でくっきりと明暗が分かれているのだ。

 思えば、ペリファーニアの兄・エフフォーリアも東開催では【6-1-0-1/8】と無類の強さを誇っていたのに対し、西開催は3度の挑戦で【0-0-0-2/2】と苦戦している。

 昨年の大阪杯(G1)では単勝1.5倍の支持を裏切る9着という不可解な敗北を喫し、続戦した宝塚記念(G1)でも1番人気で6着と連敗。そこで今年2月の京都記念(G2)では初の栗東滞在調整を実施して関西克服を目指したが、心房細動を発症したため最後までレースを走り切ることができず、結果的にはこれがラストランとなってしまった。

 なお、ペリファーニアは今回の桜花賞に向けた栗東滞在は行わず、3月のチューリップ賞を終えた段階で1度美浦に戻り、再び関西へ遠征するというスケジュールとなった。

 兄とは違い、3歳の早い段階で関西への輸送を経験しているというのは強みになるが、やはり心身ともに未成熟な3歳牝馬という部分を考えると不安は拭えない。師の言葉通りの「上積み」がある状態で臨むことができるかが、大きなポイントとなりそうだ。

 ご存知の通りエフフォーリアは今年2月で電撃引退となり、横山武騎手は涙を流して相棒との別れを惜しんだ。復活に向けて手を尽くしてきた鹿戸師としても、道半ばでの航海終了には不完全燃焼の部分があったことだろう。そんな中で台頭してきた妹のペリファーニアにかける想いは、当然強いはずだ。

 数字上は高い壁となっている“鹿戸厩舎の関西遠征”をも打ち破り、兄を超えるスターホースとなれるか。ペリファーニアが挑む女王への挑戦。まずはレースの前に、当日のパドックや返し馬の様子も要チェックだ。

GJ 編集部

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